ゾンビ大作『ワールド・ウォーZ』を観た

miroku

2013年08月16日 11:14

以前にちらっと記事にした、『ワールド・ウォー・Z』をようやっと鑑賞。

『WORLD WAR Z』読了
(↑前回記事はこちらから)












【ストーリー】
 突如発生した謎のウィルスが瞬く間に世界中へと広がり、各国の政府や軍隊が崩壊状態に陥る。
 元国連捜査官で、伝染病の調査や紛争国での調停役を務めた経験をもつジェリーは、旧知の仲の国連事務次官ティエリーに呼び出され、ワクチン開発の情報収集のため各国をめぐる調査隊に同行するよう依頼される。
 ジェリーは妻と娘2人を安全な国連指揮艦の空母にかくまってもらうことを条件に依頼を引き受け、ウィルスの謎を解明するため混乱する世界へ旅立つ。








※※※ 以下ネタバレあり ※※※



・・・う~ん、どうなんだろ?
原作と映画は必ずしもイコールじゃなくてもいいと思うし、映画独自の解釈や設定があって当然だとは思うんだけど、「ボクが映画化に際して望んでいた原作のエッセンスの悉くが無くなっていた」といった印象。

やっぱりあの原作のスケール感をブラピ演じる国連職員の一人称視点で描くってコト自体が、そもそも無理だったのかも。



物語はその名の如く「世界ゾンビ戦争」のはずなのに、映画で語られる物語はブラピの行き当たりばったりの諸国漫遊記。都市壊滅やイスラエル崩壊、そして飛行機が空中分解と、所々に大がかりなスペクタクルシーンがあるものの、美味しい部分は予告で全部魅せ切っちゃっているパターンなので、それ以上の興奮はなし。人類VSゾンビの大戦争が、最後は人里離れた研究所で繰り広げられるこじんまりとした密室劇で幕を閉じるというスケールダウンっぷり。

まぁ、ゾンビ映画のパターンとして籠城&密室劇というのはお決まりの様式美みたいなものなので、最後の部分はあえてそういう演出にしたのかもしれないけれど。。。

近代戦術が為す術なく敗れ去るヨンカーズ会戦の件や、日本政府が国土を放棄して全国民が海外へと脱出する「日本沈没リスペクト」なシーンは、是非とも映像で観たかった場面だったんだけどなぁ。



ゾンビ映画として観れば、『28日後』以下、パンデミック映画として観れば『コンテイジョン』以下という、なんとも中途半端な後味の映画でした。

ちょっと辛口になっちゃったけど、原作が面白かっただけに、残念。。。

でも、本国では大ヒットしているらしいし、続編の製作も決定とのこと。『バットマン ビギンズ』が続編の『ダークナイト』でその存在価値が新たに見出されたように、続編の出来如何で本作の評価ももしかしたら変わるかも・・・というか、それだけの熱い続編を希望!







PS...
この映画、どこからどう見たって「ゾンビ映画」なのに、日本国内の宣伝ではゾンビの名称はNGとのこと。
事実、HPのどこを探してもゾンビのゾの字は見えないし、予告編も家族愛でピンチを乗り切るパニック映画ですよといった体で作られてます・・・映画開始の5分後にはゾンビ映画だってバレちゃうのにね。そもそもタイトルのZはゾンビ(Zombie)のZだし。

ネット上でも、この宣伝方法はいかがなものかって論争があちこちで起こっているけれど、ボクも正直疑問に感じます。

いくら「感染者」なんて言葉で誤魔化したって意味はないし、だいいち映画の中で「ゾンビ」という言葉が出てしまっている以上、この日本独自のゾンビ禁止令については、もう浅はかという言葉しか思いつきません。

映画は作品であると同時に、商品でもあります。
商品である以上、「売れてナンボ」という宿命は避けられないし、事実としてたくさん売る(=大勢の人に見てもらう)為に、この映画では残酷なシーンはほとんど出てきません。


「ゾンビ映画?どうせ残酷趣味のB級映画でしょ?」


というのが大多数の正直な反応だと思うし、ゾンビよりも家族愛を謳った方が宣伝もし易いのは確かだけれど、何も知らないで劇場に足を運ぶ人もいて、その中にはゾンビ映画に免疫のない観客だっているかもしれないという可能性を考えると、この宣伝方法はあまりに不誠実なんじゃないかなと感じます。
お客に対しても、作品に対しても・・・ね。

原作の冒頭(巻末だったかな?)に、本作をジョージ・A・ロメロ(言わずと知れた現代ゾンビ映画のパイオニア)に捧ぐという一文がある以上、そこはきっちりと仁義を通してほしかったというのが、いちゾンビファンとしての希望です。




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