2018年02月24日

映画落穂拾い

またぞろ観た映画が溜まってきたので、ここらでいっちょ落葉拾い。

中にはもう公開が終了している作品もあるんですが、いづれも傑作揃い。
本来ならば落葉でなんか拾うんじゃなく、それぞれについてしっかり書きたいんだけど、、、うん、面倒くさくて♪(バカ正直ならぬ正直バカ)




『密偵』










【ストーリー】
 日本が統治する1920年代の朝鮮半島。武装独立運動団体「義烈団」監視の特命を受けた元朝鮮人の日本警察イ・ジョンチュルは、義烈団のリーダーであるキム・ウジンに接近する。
 誰が密偵かもわからないほど、さまざまな情報が錯綜する中、義烈団は日本統治下の主要施設を破壊する目的で京城に爆弾を持ち込む計画を秘密裏に進めていた。義烈団と日本警察のかく乱作戦が展開し、義烈団を追う日本警察は上海へと向かう。そして、計画通りに爆弾を積んだ列車が京城を目指して走り出していた…。




我らがソン・ガンホ兄貴の最新作は本格派のサスペンス。
日帝占領時代が舞台というコトで、なんとなくチョン・ジヒョン主演の『暗殺』のような抗日アクション娯楽作的な内容を勝手に想像していたんですが、こちらはぐっとシリアス寄り。誰が味方で敵なのかが分からない360度ダークゾーンな状況の中で右往左往し四苦八苦するガンホ兄貴のその表情と佇まいに痺れぱなし。

それと、鶴見辰吾さんも大変好印象。
鶴見さんのスラリとしたシルエットが非常に画面栄えして、独特な冷たい存在感を放っておりました。

脚本もよく練られ、演技陣も奮闘していて、エンターテイメントの王道を往く骨太な作風だったので、最後の最後まで「映画という娯楽」として楽しめたんですが、観終った後からじわじわと「分断された民族の哀しみ」という現実が胸に迫ってきて。。。





『デトロイト』










【ストーリー】
 1967年、夏のミシガン州デトロイト。権力や社会に対する黒人たちの不満が噴出し、暴動が発生。
 3日目の夜、若い黒人客たちでにぎわうアルジェ・モーテルの一室から銃声が響く。デトロイト市警やミシガン州警察、ミシガン陸軍州兵、地元の警備隊たちが、ピストルの捜索、押収のためモーテルに押しかけ、数人の白人警官が捜査手順を無視し、宿泊客たちを脅迫。誰彼構わずに自白を強要する不当な強制尋問を展開していく…。




これはもう、映画じゃなくてタイムマシン。
1967年のあの場所あの瞬間に観客を乱暴に解き放って、「さぁ、アンタならどうする?」と問いかけられ続ける143分でした。

何が怖いかって、この事件は「凶行」ではなく、治安や秩序を維持する為にその権力を行使する権限を持った人間たちによって冷静な判断の元で行われた「職務」だというコト。
たしかにこの映画は人種問題を扱っていて、現に今でもアメリカでは警官によって年間に少なくない人数の非白人たちがその生命が奪われているという現実があるけれど、今作が提起している問題は決して対岸の火事なんかではなく、国家や企業、それに社会といった組織体が恒常的に抱えている問題なんだと感じます。

関東大震災の直後に吹き荒れた、とあるデマによってもたらされた特定の民族の人たちに対する理不尽な暴力(もっとはっきり書いてしまうと虐殺行為)や、甘粕事件の例を出すまでもなく、ボクたちは映画に、そして歴史に学ぶという謙虚な姿勢を決して忘れてはいけないと痛切に思うし、そして願う。





『グレイテスト・ショーマン』










【ストーリー】
 貧しい家に生まれ育ち、幼なじみの名家の令嬢チャリティと結婚したフィニアス。妻子を幸せにするため努力と挑戦を重ねるフィニアスはやがて、さまざまな個性をもちながらも日陰に生きてきた人々を集めた誰も見たことがないショーを作り上げ、大きな成功をつかむ。しかし、そんな彼の進む先には大きな波乱が待ち受けていた…。




んもうッ!最の高!略して最高ッ!!!
曲も良けりゃあダンスも絶品で、観ている間中アタマの中に変なアドレナリンが分泌されまくってました。
ネタバレになるから書かないけれど、オープニングのわずか15秒でボクの心は鷲掴み。ダチョウ倶楽部も真っ青な華麗にて見事なる「つかみはOK」でした。

この映画、実在した興行師がモデルになっているんですが実はそのモデルはあくまでモチーフにしか過ぎなくて、実はこの映画、主演のシュー・ジャックマンへのリスペクトを捧げた脚本なんだそうで。
なるほど、そう言われてみると劇中のあれやこれやに妙な説得力が湧くし、これほどまでのリスペクトを真正面から受け止めて、その美声と偉丈夫っぷりで堂々と舞い踊るヒュー・ジャックマンの男っぷりの良さときたら!
彼のツイッターを見ても、「この人本当にイイ人なんだろうなぁ」というのが伝わってくるし、流石はハリウッドの良心の異名を持つナイスガイだと感服&惚れ惚れした次第。

全てのナンバーが名曲なんだけど、中でもキアラ・セトルの堂々たる歌声に魂が揺さぶられる「This Is Me」と、レベッカ・ファーガソンの絶唱(歌っているのは別人だけど)が印象的な「Never Enough 」の2曲が特に素晴らしくて。
・・・で、早速アマゾンでサントラをポチッちゃったというね(苦笑)

あと、一部で議論になっているフリークス問題。
多くは語りませんが、ボクは「賛」のスタンス。
もちろん当時のサーカス(見世物小屋)の人権意識の低さを擁護するワケじゃないけれど、「多様性の尊さ」というテーマは十分伝わってきたし、それ以上のコトを掘り下げるべき役目を今作は担ってはいないと思うので。





『スリー・ビルボード』










【ストーリー】
 米ミズーリ州の片田舎の町で、何者かに娘を殺された主婦のミルドレッドが、犯人を逮捕できない警察に業を煮やし、解決しない事件への抗議のために町はずれに巨大な広告看板を設置する。それを快く思わない警察や住民とミルドレッドの間には埋まらない溝が生まれ、いさかいが絶えなくなる。そして事態は思わぬ方向へと転がっていく…。




犯人探しのサスペンスかと思ったら・・・あ、あれ?
ならば、ハードなヒューマンドラマかと思ったら・・・あ、あれ?
コイツ、ムカつくわ~と思ったら・・・あ、あれ?

この映画で描かれているのは、深刻で哀しい出来事だったり、苦笑いせざるを得ない間抜け日常だったり、人間が持つ何気ない些細な優しさだったり、またはその逆だったり。
観客の予想が次々と覆されるその展開も含めて、ジャンルとして捉えどころのないその千変万化なスタイルは、「こういう展開、なんか知ってるぞ・・・」という既視感。
知っているもなにも、これって人生そのものなんだよね。

どんなに哀しいコトがあっても腹は減るし、日常は絶え間なく続いていく。
根っからの悪人がそうそういないように、成人君主のような善人だっていやしない。
小さな善意に救われたり、理不尽な悪意にくよくよしたり、誰かを傷つけ誰かに傷付けられ、時には自分自身を傷つけながら、死ぬまではどんなに足掻こうが毎日やってくる明日という日を生きていかねばならない、、、この映画はそんな「不器用でままならない生き方」に優しく寄り添ってくれる映画だと思うし、ラストシーンで主人公が発する「とある言葉」に、途轍もなく大きな優しさと救いを感じました。
物語としての着地点の見事さは、最近観たどの映画よりもずば抜けて完成度が高かったように思います。

演技陣も良かったなぁ。
サム・ロックウエルは最初は彼と分からない程に役作りが完璧だったし、ウディ・ハレルソンの渋味と軽妙さ、そしてある種の諦観を湛えた演技も本当に素晴らしかった。不幸な(?)広告代理店主を演じるケイレブ・ランドリー・ジョーンズも印象に残っていて、「コイツ、若手だけどなかなかのクセモノだなぁ」という感じが夭折したアントン・イェルチンの面影と重なる瞬間もあって、脳内の名前を覚えておいた方がいい役者リストに早速チェックを入れちゃったもの。




以上、「本当だったら今日公開の『空海』を観に行く予定だったんだけど、昨日から体調が芳しくないので安静にしながら暇にまかせてダラダラと映画レヴューを書き殴ってみましたとさ」な落ち葉拾いでした。ギャフン、そしてゴホン(あぁ、喉痛い・・・)




  


Posted by miroku at 11:11Comments(2)日記映画