2014年06月01日

映画『北朝鮮強制収容所に生まれて』

昨日の記事で、「それはまた次のオハナシで」などと思わせぶりに〆た映画について、つらつらと。




『北朝鮮強制収容所に生まれて』




【公式HPはこちらから】


【ストーリー】
 北朝鮮の強制収容所で生まれ育ちながらも奇跡的に脱北した青年の想像を絶する半生に迫ったドキュメンタリー。
 北朝鮮の政治犯強制収容所で政治犯の両親の間に生まれ、幼少時から強制労働や飢え、看守の暴力を強いられて育ったシン・ドンヒョク。23歳の時に運良く収容所を脱出した彼は、北朝鮮から中国を経てやがて韓国へとたどり着く。ドイツのドキュメンタリー作家マルク・ビーゼが、シン本人へのインタビューを中心に、2人の元収容所関係者にも話を聞き、収容所の衝撃の実態を明らかにしていく。




※ 以下はネタバレ必至。でも、この作品はドキュメンタリーなので、あえて気にせずに書きます ※



一度収容されたら、二度と出るコトはできない強制収容所。
この映画は、そこで生まれ、「この世界に誕生したその瞬間から政治犯」という、ボク達の常識では考えられない境遇の元で育ち、時を経て脱北したシン氏のインタビューを中心に製作されたドキュメンタリーです。

いくら働いても賃金は出ず、家に物がないので「家具」という概念すら知らない。
必要最低限の読み書きしか教えられず、人としてのルールや倫理観を教えられないまま、家族間でも密告が推奨される・・・決して生きて出ることの出来ない、そんな常軌を逸した場所。

まるでB級マンガの設定のような狂った場所が現在でも存在し、そこに暮らすおよそ20万人もの人々が、「ボクが今こんな文章を書いている」と同じ時間をリアルタイムで共有しているという事実に、軽く眩暈を覚えます。



そんな場所でシン氏の「とある行動」によって起きた出来事は、あまりに残酷で「哀しい」なんて表現では到底表しきれません。

その行動とは、脱走を試みた母親と兄を密告したこと。
そして、その結果自らも拷問を受け、更には目の前で母親と兄が公開処刑されるという、文字通り地獄のような体験でした。

でも・・・

「母親が死んでも哀しくなかった。
親が処刑されたら泣けと教育されたことはないから」


母親の処刑の瞬間、シン氏の感情は動かなかったそうです。むしろ、母親が脱走を企てたせいで自らも拷問を受けたことで、(処刑の瞬間は)憎くてしようがなかったとも語っていました。。。




この作品は、「地獄のような北朝鮮を抜け出し、今は韓国で幸せに暮らしています」といったいわゆる「北朝鮮残酷物語」とは異なるように、ボクには感じられます。

異常な環境下に生まれ、人間としての「情」がほとんど育たないまま成長し、数奇な運命の元で「普通の世界」にたったひとりで放り出されたひとりの男の、地獄巡りの心の旅路・・・この作品のテーマは、その部分にこそあるんじゃないかなと。

北も南も関係なく、収容所が世界の全てだった氏の目に、今この世界はどう見えているのか?という視点も含めて、非常に見応えのある作品でした。






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Posted by miroku at 18:02│Comments(0)日記映画
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