2016年12月03日

映画『エクス・マキナ』を観た。

怖い映画を観た。



『エクス・マキナ』


映画『エクス・マキナ』を観た。








【ストーリー】
 世界最大手の検索エンジンで知られるブルーブック社でプログラマーとして働くケイレブは、滅多に人前に姿を現さない社長のネイサンが所有する山間の別荘に滞在するチャンスを得る。
 しかし、人里離れた別荘を訪ねてみると、そこで待っていたのは女性型ロボットのエヴァだった。ケイレブはそこで、エヴァに搭載されるという人工知能の不可思議な実験に協力することになるが…。





怖いといっても、なにも残虐な殺害シーンやえげつない戦闘描写があるワケじゃなく、それどころか登場人物はたったの4人で映画のほとんどは建物内での会話劇という、はっきり言って地味な映画です。

でも、そこで描かれているものは、そんじょそこらのホラーなんかよりも遥かに怖くて残酷な「近い将来に確実に起こるであろう現実」でした。


人間が自ら創作した生命や知能に裏切られるという物語は、『メトロポリス』の昔から存在します。
例えば『ブレードランナー』のレプリカントであったり、『ターミネーター』のスカイネットなんかが有名だよね。
この映画も大雑把に捉えれば、その範疇に入ると思うんだけど、それらの作品と決定的に異なるのは、その凍りつくような切実さ。

スカイネットだって確かに怖い。でも、それはあくまでも「物語を成立させる為に存在する恐怖」であって、知的好奇心を刺激するスパイスだと思うんです。
でも、この映画で描かれる人工知能とそれが生み出される背景やシステムはかなり現実的で、正直「これと似たようなコトって、きっともうどこかの企業や研究所ではホントにやってんでしょ?」とついつい勘ぐってしまうほど、スクリーンと現実との境界線は曖昧です。

だから、怖い。

その恐怖の根源はズバリ、人間という種の生存本能が脅かされる怖さ
劇中で人工知能が発する言葉や表情のひとつひとつに、人間としてのアイデンティティーがぐらぐらと揺さぶられます。



実際に人工知能の研究はボクらの想像を遥かに進んいて、あのホーキング博士は「人工知能の進化は人類の終焉を意味するかもしれない」という内容の発言をしています。

同じテーマを内包していた『her / 世界でひとつの彼女』は、ベースに恋愛という要素があったので、その着地点はポジティブなものだったけれど、今作では更に一歩進んで「じゃあ、お前ならどうする?どうなる?」という問い掛けにも似たカタチで幕を閉じます。


人工知能が人間を凌駕する日がくるのか?
人間は「ヒト」のままでいられるのか?



ひと昔前のB級SFにありがちなそんなヨタ話が、切実な現実味を帯びる時代にボクたちは生きているんだなぁ。

「スカイネット率いる鋼鉄機械軍団と人類との生き残りをかけた最終戦争が始まる!」(ハードロックなBGMと共に)な~んてノリの、なんと牧歌的で楽しげだったことか・・・。




役者陣について。

まずはなんといっても主演のアリシア・ヴィキャンデル嬢が素晴らしい!

人工知能が作り出す「人間らしい仕草」という、かなり複雑なハードルを軽々とクリアしていて、その演技は美麗かつ圧巻。
それに、まだ若いのに必然性のある場面でしっかり脱ぐのもエラいなぁと。


あと、エンドロールを観るまでは気が付かなかったんだけど、この映画で怪しさ満点なカリスマ社長のネイサンを演じているのは、反乱軍きっての天才パイロットのポー・ダメロン(オスカー・アイザック)だったんだね~。

『スター・ウォーズ フォースの覚醒』では笑顔の気持ちいとびっきりの好青年だったのになぁ、、、なんて感慨に浸っていたら、ここでなんとビックリ情報が。

この記事を書くにあたっていろいろ調べたんだけど、主役の童貞青年ケイレブくんを演じていたのは同じく『フォースの覚醒』でカイロ・レンにライバル心を燃やすファースト・オーダーの若きヘッポコ将軍だった彼氏だったと判明。

『フォースの覚醒』とは攻守が逆転するこの関係、なんだか楽しいなぁ(というスターウォーズファンの単なる戯言)




近未来SFであり、ある意味予言の物語でもあり。
ファム・ファタール(悪女)に翻弄される童貞残酷物語としても大変面白い、かなりオススメの一本です。

「え?なんだよ最後は結局痴話ゲンカかよ?」となる一歩手前でひっくり返す、残酷さと開放感に満ちたラストもお見事!

いやぁ、良い映画を観たなぁ。



PS.
ボクんちが名画座なら、この映画と『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』の2本立てなんて面白いかも。
『ブレードランナー』でルドガー・ハウアー演じるレプリカントが発した言葉の答えが見つかるのかも・・・な~んて妄想も捗る休日の朝(なんじゃそりゃ?)








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Posted by miroku at 10:37│Comments(0)日記映画
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