2015年11月25日

映画落穂拾い

観た映画が溜まってきたので、例によって落穂拾いにて。





『ヴィンセントが教えてくれたこと』






【ストーリー】
 アルコールとギャンブルを愛する、嫌われ者の偏屈親父ヴィンセントは、隣に引っ越してきたシングルマザーのマギーから、彼女の仕事中に12歳の息子オリバーの面倒を見るよう頼まれてしまう。嫌々ながらも引き受けたヴィンセントは、行きつけのバーや競馬場にオリバーを連れて行き、バーでの注文方法からいじめっ子の鼻のへし折り方まで、ろくでもないことばかりを彼に教え込んでいく。
 オリバーはそんなヴィンセントと反発しあいながらも、一緒に過ごすうちに彼の隠された優しさや心の傷に気づいていく。
 ビル・マーレイ扮する破天荒なダメオヤジが、12歳の少年との交流を通して生きる力を取り戻していく姿を描いたハートフルコメディ。




我が人生の憧れヂヂイ(=ボンクラ未来予想図)、ビル・マーレイの最新作にして主演作。仕事帰りに千石劇場まで馳せ参じてきました。

ビル・マーレイ版『グラン・トリノ』『アバウト・ア・ボーイ』でも可)といった印象の、いわゆる「おっさんと少年」モノ。
偏屈ヂヂイと貧弱少年の心のアンサンブルを愉しむ映画なんだけど、そこはビル・マーレイ。「悪態・不機嫌・仏頂面」という彼の十八番芸を十二分に堪能できる、マーレニアン(ビル・マーレイのファンの総称。勝手に命名)には堪らない作品に仕上がっておりました。


この作品が素晴らしいのは、彼が「変わらない」コト。
ギャンブル好きでその日暮らし、粗暴で粗野な不良老人。痴呆症の妻に純愛を貫きながらも、妊婦の娼婦に入れあげてみたり(世界一やる気のないベッドシーンは必見!)。
人間嫌いな筈なのに少年の面倒を見るうちについつい情が移っちゃうあたり、根っからの悪人ではないものの、近所に住んでて欲しくない度ナンバー1な因業ヂヂイのまま物語は進んでいくんだけれど、じゃあ何が変わるかというと、周囲が変化する。少年の眼差しを通じて、周囲が彼を理解し始めるようになる。ここが素晴らしい!

その人が何を考えているのか?どう思って行動しているのか?なんてそんなコト、他人には絶対に分からない。
分からないし、正直分かりたいとも思わない。表層的な部分だけで「この人はこんな人」とレッテルを張って、粛々と日常を過ごすだけ。

いや、それはそれで構わないと思うんです。身の回りの人たち全てを深く理解しようなんて、そんなの絶対に無理だもの。

でも、大切な人は違う。
その人を思い、もっと知りたいと願い、例え社会的にはお手本にならないような行動や言動があったとしても、それを受け入れ理解したい。

つまりは、「寛容である」というコト。
そして、そんな寛容さを抱ける大切な友人や家族がいる人生は、芳醇だというコト。

物語終盤で描かれる「とあるイベント」のシーンでは、我慢できずに大落涙。。。


予想以上に、良作でした。
マーレニアンも、そうじゃない人も、観ると心が優しくなれるそんな映画です。オススメ。
ある意味この映画一番の見どころな圧巻のエンドロールも最高でした!







『コードネーム U.N.C.L.E』






【ストーリー】
 東西冷戦下の1960年代前半。核兵器とその技術の拡散によって世界を滅ぼそうとする国際犯罪組織の存在がキャッチされ、その陰謀を阻止するべく手を組むことになったCIA工作員ナポレオン・ソロとKGB工作員イリヤ・クリヤキンは、組織に潜入する鍵を握るドイツ人科学者の娘ギャビーを守りながら、行方をくらませた科学者を探し出すため奔走する。
 「シャーロック・ホームズ」シリーズのガイ・リッチー監督が、1960年代に人気を博したイギリスのTVシリーズ「0011 ナポレオン・ソロ」を新たに映画化したスパイアクションアドベンチャー。




なんでも、今年はスパイ映画の当たり年なんだそうで。
なるほど、『ミッション:インポッシブル / ローグ・ネイション』も楽しかったし、『キングスマン』は文句なし。
で、今作。テンポの良さとトリッキーな映像表現(いわゆるガイ・リッチー節)と、60年代という舞台設定が絶妙にマッチした快作でした。

元ネタのTVシリーズ『ナポレオン・ソロ』には一切の思い入れがなかったのも、純粋に楽しめた理由のひとつかも。


明るく楽しいスパイ映画。007シリーズだとロジャー・ムーア時代のテイストに近いのかな・・・というか、まんまあんなカンジ。
イケメンスパイが美女とイチャイチャしたりハラハラしたり裏切られたりしながらニカッと笑って世界を救う。こういう呑気な映画、キライじゃないです。

敵のスケールが中途半端だったのがちと残念だったけど、必ず製作されるであろう続編に今から期待大!


スパイといえば、いよいよ来月公開の『007 スペクター』
悪の秘密結社の真打が遂に登場、しかもボスがあのクリストフ・ヴァルツ
嗚呼、早く観てぇ・・・








『インサイド・ヘッド』







【ストーリー】
ディズニー製作の大ヒットアニメ・・・って、今さらボクが書くまでもないよね。




非常に良く出来た・・・というか、出来過ぎなくらいに全ての完成度が非常に高いアニメーションでした。
人の心を擬人化するというアイデアは今までもあったけれど、おそらくは心理学や人の心を扱った専門分野の最新見解が盛り込まれているであろうストーリーは、大人が見ても胸を打つエモーションがあるし、キュートな優しさに溢れる美しい映像も素晴らしい。

でも、、、

作品を構成する全ての要素があまりにしっかりし過ぎていて、「映画としてのスキがない」んだよね。
オカシな例えだけれど、まるで心が疲れた時に処方される「薬」のような感覚。
薬を飲めば、たしかに気持ちは心が楽になるし安定もする。そもそもそれが目的だしね。
でも、ボクが観たのは薬じゃなくて映画。

素晴らしい作品だし、事実ボクも途中で大粒の涙が何度も流れた(またかよ!)けれど、もうちょっと付け入るスキみたいなモノ(上手い表現が思いつかないが・・・)が感じられたなら、映画としてもっと好きになれたような気がするなぁ・・・と、そんな印象。







『犬神家の一族』






【ストーリー】
名探偵金田一耕助が・・・って、これまた今さらですな。




春日太一氏による市川昆研究本「市川昆と『犬神家の一族』」



映画落穂拾い



そのあまりの名著っぷり(特に石坂浩二インタビューが白眉!)に、読了後すぐにNetflixにて鑑賞。
もともと大好きな作品だったけれど、あらためてその「映画としての強度」を再認識。


特に「金田一 = 天使」という認識について。
これはなにも金田一耕助がエンジェルみたいにカワイイってコトじゃなくて(当たり前だよ!)、天からの使いという意味。
金田一耕助という存在は、探偵として単純に事件を解決するんじゃなく、その事件が起きるに至った過去からの因縁を見届け、その因果を断つ為に使わされた者だという認識で、なるほど金田一は事件を解決するどころか、最後のひとりが殺されるまではある意味「傍観者」に徹しています。

殺されるべき者が殺され、過去の因果が白日の下に曝け出されてはじめて、金田一はその口を開いて我々観客に推理という名の解説をすることで、怨念の連鎖が断ち切られる・・・そういう視線でこの映画を今改めて見直すと、この映画が持つ「懐の深さ」に魅了された次第。


・・・でも、一番好きな金田一モノは市川昆のじゃなくて、野村芳太郎監督版『八つ墓村』なんだけどね。
渥美清(寅さん!)演じる金田一の無力・・・もとい天使っぷりも素晴らしい!







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Posted by miroku at 23:03│Comments(2)日記映画
この記事へのコメント
ども こんにちは

ワタシも『ヴィンセントが教えてくれたこと』と
『コードネーム U.N.C.L.E』 観ました
ヴィンセントのほうはワタシも不覚にも落涙(笑)
お奨めの映画ですね~
コードネーム U.N.C.L.Eも
面白く観ましたよね
あのノリ イイですよね~♪
Posted by kobay55kobay55 at 2015年11月26日 17:52
kobayさん、おばんでがす。

『ヴィンセント』、ありゃちょっと卑怯ですよね~
あんな盛り上げ方されたら、誰だって涙腺のダムが決壊するっちゅうねん!

『U.N.C.L.E』も連続スパイ活劇の第一話ってカンジで、ひたすら楽しいかったし、今年の秋映画は豊作ですよね~

でもって、『007スペクター』と『S・W』が控えているという幸せ^^
Posted by mirokumiroku at 2015年11月26日 22:58
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